同性婚訴訟7(東京高裁第2次訴訟)

2025年11月28日に東京高裁(第2次訴訟)の判決がありました。

札幌高裁、東京高裁、福岡高裁、名古屋高裁、大阪高裁と異なり、同性婚を認めないこと(正確には、同性婚を認めていない民法と異性婚のみの届出を認める戸籍法の諸規定)を合憲としました。

違憲とした高裁判決は、婚姻の本質を、両当事者が永続的な精神的・肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むことにあるとし、本件諸規定は、これだけでなく生殖と子の保護・育成も図っている、と理解していたのだと思いますが、本判決は「民法が採用した法律婚制度は、『一の夫婦とその間の子』の結合体を、社会の基礎的な構成単位となる基本的な家族の姿として想定するという制度設計に立って構築されたもの」と解しています。

また、本件諸規定を違憲とするということは、本件諸規定の「夫婦」に同性カップルを含めるということになるが、それは、憲法24条が国会の選択に委ねた家族に関する法制度を一義的に具体化することになるのであり、そのような解釈は取り得ないとしています。札幌地裁から始まった、同性婚の内容は一義的ではないとしても、同性カップルが法律婚の効果を全く享受できていない状態は憲法に反する、という問題には答えていないようです。

その上で、結論としては本件諸規定を合憲としていますが、「客観的にみて、控訴人(原告)らが性自認等に従った法制度上の取扱いを受けるという人格的存在と結びついた重要な法的利益が十分に尊重されているとは評し難い状況にある。」とした上で、国の「関係行政機関が、LGBT理解増進法に基づき、性的指向及びジェンダーアイデンテイティの多様性に関する国民の理解の増進に関する施策を的確に実施していれば、このような状況が生じるとは考えられない。そうであるとすれば、当該施策を実施する権限を有する関係行政機関の公務員が、漫然と当該施策の実施を怠り、性的指向及びジェンダーアイデンテイティを理由とする不当な差別が生ずる状況を放置しているものとして、控訴人(原告)らとの関係で、国家賠償法1条1項の適用上違法となる場合もあり得る」し、「このままの状況が続けば、憲法13条、14条1項との関係で憲法違反の問題を生じることが避けられない」としています。

【本件諸規定は、憲法24条に違反しない】

婚姻及び家族に関する事項は、国の伝統や国民感情を含めた社会状況における種々の要因を踏まえつつ、それぞれの時代における夫婦や親子関係についての全体の規律を見据えた総合的な判断を行うことによって定められるべきものである。

憲法改正当時の社会状況において、婚姻として社会的承認を受けていた結合関係は、異性の者同士が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営む結合関係のみであった。

憲法改正当時、社会的承認を受けていなかった他の人的結合関係については、憲法が一義的に定めるのではなく、第一次的には、憲法24条2項の「家族に関するその他の事項」として、国の伝統や国民感情を含めた社会状況における種々の要因を踏まえつつ、その各時代における夫婦や親子関係についての全体の規律を見据えた総合的かつ合理的な判断により、具体的な制度の構築を国会が合理的な立法裁量で決することが予定されていると解されるのである。したがって、憲法24条1項、2項の「婚姻」に同性の者同士の結合関係が含まれるとは解されない。

憲法改正当時、社会的承認を受けていなかった他の人的結合関係は、同条2項の「家族に関するその他の事項」として、具体的な制度の構築を第一次的には国会が合理的な立法裁量で決することが予定されていると解される。

【本件諸規定は憲法14条1項に違反しない】

民法が採用した法律婚制度は、「一の夫婦とその間の子」の結合体を、社会の基礎的な構成単位となる基本的な家族の姿として想定するという制度設計(以下「本件制度設計」という。)に立って構築されたものと解され、本件諸規定の立法目的は、本件制度設計の下で、夫婦が夫婦としてどうあるべきかという観点のみならず、その間に生まれてくる子の父母としてどうあるべきかという観点から、具体的な婚姻の要件及び効果を定めることにあると解するのが相当である。

今日の実際の社会の基礎的な構成単位は多様化し、もはや「一の夫婦とその間の子」から成る家族「のみ」が社会の基礎的な構成単位であるとは評価し難い社会状況にある。また、現時点では、同性の者同士の事実婚も、一つの家族の姿として社会的承認を受けており、国会が選択決定する婚姻及び家族に関する法制度の制度設計は、本件制度設計のみに限られない。

しかしながら、生まれる子の側からすると、嫡出子率は、昭和22年以来、100%近い割合を維持し続け、令和5年においても 97.5%の子が嫡出子として出生している。このように、生まれる子の側からみれば、100%近くが夫婦の間の子として出生して養育され、「一の夫婦とその間の子」として社会生活を営んでいるわけであり、そのような国民が、なお全体の4分の1に及ぶ社会状況にあるわけである。

そうすると、本件諸規定の立法目的は、現時点でもなお合理性を有しており(※1)、本件諸規定における「夫婦」を法律上の男性である夫と法律上の女性である妻と解することは、上記立法目的との関連において合理性を有している。そして、本件諸規定が存在しなければ、誰も婚姻ができなくなり、憲法13条、24条に違反する結果となるから、その存在が憲法に違反することもあり得ない。したがって、本件諸規定による本件区別的取扱いは、事柄の性質上、合理的な根拠に基づくものといえる。

※1 本判決は、同性カップルの「性自認等に従った法制度上の取扱いを受けるという人格的存在と結びついた重要な法的利益が十分に尊重されているとは評し難い状況」が続けば本件諸規定が憲法13条、14条1項違反の問題を生じることが避けられないとしていますが、他方で、現在においても多くの子が夫婦の間の子として出生して養育されていることから、「一の夫婦とその間の子」を社会の基礎的構成単位とすることに合理性があるとしています。そうすると、同性カップルが数の上では少数であることは将来も変わらないでしょうから、この合理性が否定され、本件諸規定が憲法13条、14条1項に反するに至ることは考え難いように思います。

同性の者同士に係る家族に関する法制度は、その性質において、憲法上保障された権利を実現するものではない。その内容においても、新たに社会的承認を受けた家族の姿についての法制度を制度設計から検討するというものである。諸外国においても、同性の者同士に係る家族に関する法制度の立法時期は国ごとに異なり、創設していない国もある。そうすると、国会がこのような性質・内容の立法を怠っているとみたとしても、現時点においては、このことをもって直ちにその立法不作為が憲法14条1項に違反するとはいえない。

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